お気に入りのカバン

冬の空気がきゅっと澄み渡る朝。 いつものカーキ色のビジネスリュックを肩にかけ、会社へと向かいました。 これは四国・高松にある小さなカバン屋さんで出会った、私の頼れる「相棒」のような存在です。

使い込むほどに馴染み、「今日もがんばろう」と背中をそっと押してくれる。道具にはそんな不思議な力が宿る気がします。

ひとまわり大きなサイズを求めてお店を訪ねた時のこと。あいにくカーキ色は製造されてなく、「やっぱりこの色がいいんです」とリクエストを残して帰りました。 あれから1年。小さな声が届くかなと半分あきらめていたのですが、先月末、ついにラインナップに加わったと連絡をいただいたのです。

届いた箱を開けた瞬間、目に飛び込んできた深いカーキ色。 それを見たとき、高松の店主さんの優しい笑顔まで思い出されて、なんだか胸が温かくなりました。 モノの向こう側には、必ずそれを作った「人」がいるんですよね。 だからこそ、大切に使えば使うほど愛情がわいてくるのだと思います。

これは、私たち建設の仕事も同じです。 毎日向き合う現場は、手間ひまをかけた分だけ、どんどん好きになっていく。そこから確かな誇りが生まれます。 若いスタッフたちにも、そんなふうに思える“自分の相棒”を見つけてほしいなと願っています。

さあ、この新しいリュックと一緒に、今日からまた一歩。 次の出張が、今から少し楽しみになってきました。

― 堀内大祐(株式会社堀内組 代表取締役社長)

カーキ色のカバン